Marianの「ウサギとカメ」発言に、当事者のカメさん(東京在住?)より
メッセージをいただきましたので、ご承諾を得てここに掲載させていただ
きます。メッセージをいただけてMarianは嬉しかったです。カメさん、本
当にありがとうございました!



★★★カメさんからのメッセージ★★★

実は私はあの「うさぎと亀」の物語にあったあの亀です。 もうあの出来事から50年近く経ってしまいましたが、あの話が いまだに語り継がれているなんて、はなはだ恐縮しております。 ところで私に対する批判があるという話を聞きまして、ちょっと一言お話をしたくて、メールを出します。 そもそもマイペースをモットーとしているのはウサギのほうではなくて 亀のほうです。「ウサギはウサギの速さで跳ね、亀は亀の速さで 歩めばいい」というのは私が日頃から言っていたことなのです。 なんていったってそのくらいのマイペースでなければ、100年という 寿命は絶対に達成出来ませんよ。 ところがあの日、ウサギは私にレースを挑んできました。 私は、はなから相手にしなかったのですが、 「おまえは世界で一番のろい」とか言って盛んに私を挑発しました。 私にだってちゃんと自尊心と言うものがあります。 頭脳や理性では絶対にウサギに負けないと言うプライドがあります。 でも誰だってあそこまで徹底的に侮蔑されたら、負けるとわかっていても あの勝負受けるしかないじゃないですか。 受けなきゃ、きっとウサギは私のことを卑怯者だ弱虫だとこき下ろすに 決まっています。 長い間には損得や勝ち負けを度外視して、我慢して勝負に 挑まなくちゃならない時があるのです。 正直あのレースは私は勝てるとは絶対に思っていませんでした。 だってウサギの方が私より100倍くらい速く走れるのですから。 そしてたまたま私は勝ちました。 そのことに対しては誰からも文句を言われる筋合いはありません。 勝ったということは純然たる事実だからです。 ただ後世の人が勝手にその話を美化して語り継いでいるだけで あの勝負においての私を責めるのは全くのお門違いというものです。 ウサギが寝ているのを何故起こさなかったかという指摘が あったと聞きますが、もしウサギか怪我をしていたり、 気分が悪くなっていたなら絶対に助けました。 また、ゴールの時間によっては夕暮れになって危険が 生じるような事態だったなら、やはりウサギを起こしたと思います。 でもあれはレースだったのです。 マイペースが私のモットーと先ほど言いましたが、マイペースで レースに臨んでいる私が、やはりマイペースで走り途中で 眠っているウサギのぺースを乱すのは却ってフェアでなくなって しまうのです。 考えてみて下さい。人間のマラソンだって先行逃げ切りのタイプも いれば、最初はおさえて後から追い上げるタイプもいます。 自分が先行タイプだからって追い上げタイプの人を途中で後押し したら絶対に相手にダメージを与えますよね。 あのレースだって、休息中のウサギを起こすことは一見善行に 思えますが、却って睡眠を中断させるというダメージを相手に 与えてしまう可能性も大なのです。 それこそウサギは放っておけば十分体力回復をはかって、 私のゴールの10センチ前で逆転する可能性だって大なのです。 そういう作戦ではなかったみたいだというのは、あのレースが 終わって初めてわかったことなのです! ウサギを起こすべきだったという指摘は独善というものです。 ウサギはウサギの速さで跳ね、亀は亀の速さで歩めと 言いながら、途中で相手を起こすべきだとも言うことに矛盾を 感じませんか? 最後にもう一言いわせていただきます。 私はたとえそれが事実であろうと誰からも「のろま」とは 言われたくはありません。 それは言葉による「暴力」といいます。 そのような相手を深く傷つける言葉を平気で発する 人がもしいるならば私は心からその人を軽蔑いたします。 厳しい現実の世界ではほとんどの場合ウサギが勝つ というような指摘をする人もいると聞きますが、 あのウサギは40年も前に死んでしまいました。 動物の世界においては勝ち負けを論じるのは空虚です。 多分人間の世界も同じじゃないかと私は思っています。


★★★Marianからカメさんへのお返事★★★

カメさんへ
メールありがとうございました!

> ところで私に対する批判があるという話を聞きまして、
> ちょっと一言お話をしたくて、メールを出します。

★「批判」というより、「疑問」でしたが・・・

> そもそもマイペースをモットーとしているのはウサギのほうではなくて
> カメのほうです。

★もちろん、そうですよ。だから、なぜあんなウサギのショーモナイ挑発に応じたのかと疑問だったのです。

> 私にだってちゃんと自尊心と言うものがあります。
> 頭脳や理性では絶対にウサギに負けないと言うプライドがあります。
> でも誰だってあそこまで徹底的に侮蔑されたら、負けるとわかって
> いても、あの勝負受けるしかないじゃないですか。

★何故、勝負を受けたのか、そのへんを知りたかったのです。なるほど、わかりました。

> 受けなきゃ、きっとウサギは私のことを卑怯者だ弱虫だとこき下ろす
> に決まっています。長い間には損得や勝ち負けを度外視して、我慢
> して勝負に挑まなくちゃならない時があるのです。

★もちろん『勝ち負けを度外視して勝負に挑まなくてはならない』時はあります。でも、それがどんな時かは、そのへんは、それぞれの価値観かもしれませんね。私だって、負けるとわかっていても「名誉」と「自尊心」のために勝負を受けることはあるかもしれませんが、でも、私のいう「名誉」や「自尊心」は、脚の速さのことで『卑怯者だ弱虫だとこき下ろされ』ても多分、動じません。脚が遅いことを『のろま』と軽蔑されても、そんなことでは「名誉」をかけた勝負はしませんから… そのへんを、知りたかったのでした。

> 正直あのレースは私は勝てるとは絶対に思っていませんでした。

★それが知りたかったのです。

> ウサギが寝ているのを何故起こさなかったかという指摘があったと
> 聞きますが……そういう作戦ではなかったみたいだというのは、あの
> レースが終わって初めてわかったことなのです!

★よくわかりました。なるほど、ごもっともです。起こす必要がなかったことを認めます。(それに起こすようなカメなら、そもそも初めから勝負などしなかったでしょうしね。)

> ウサギを起こすべきだったという指摘は独善というものです。ウサギ
> はウサギの速さで跳ね、カメはカメの速さで歩めと言いながら、途中
> で相手を起こすべきだとも言うことに矛盾を感じませんか?

★「ウサギはウサギの速さで跳ね…」云々は、勝負をする必要があったのかどうかという次元でのことであり、「起こすべき…」云々は実際に始まってしまった勝負のフェアプレーという次元で言ったつもりで、別に矛盾とは思いませんが… ただ、私は「起こすべき」だと言うよりも、傍らを追い越して行く時のカメさんの表情を想像すると嫌悪感を感じる… 気がしたのでした。(もちろん、実際にどんな表情をしていたかは、私の想像が間違っていたかもしれませんし… カメさんがどんなつもりで勝負に及んだかという前提そのものも疑問でしたから、全くの想像にすぎませんでしたが…)…というわけで、矛盾ではありませんが、起こす必要がなかったという理由は納得しました。

> 最後にもう一言いわせていただきます。私はたとえそれが事実で
> あろうと誰からも「のろま」とは言われたくはありません。それは
> 言葉による「暴力」といいます。そのような相手を深く傷つける言葉を
> 平気で発する人がもしいるならば私は心からその人を軽蔑いたします。

★私なら、そんな軽蔑すべき相手と「真剣勝負」はしないもんで…カメさんが勝負に応じたのは「何故なのか」「勝算があったのか?」と不思議でならなかったわけです。

> 動物の世界においては勝ち負けを論じるのは空虚です。
> 多分人間の世界も同じじゃないかと私は思っています。

★そんな「空虚」がわかっていながら勝負なさったのですね…「名誉」と「自尊心」をかけて……
お手紙ありがとうございました。たいへん参考になりました。


★★★再びカメさんからのメッセージ★★★

さっそくのお返事有難うございました。お忙しいところ色々私のためにご腐心して下さいまして本当に有難うございました。なにせ話が自分の事だったので、ちょっと気持ちがナーバスになってしまいまして、私らしからぬ感情的なお話を一気にまくしたててしまいました。きつい口調でどうもすみませんでした。
今ではこの歳ですから温和な面が多少は出るようにやっとなってきましたが、なにせあの時はまだ血気盛んな頃でして、思い出すだけで興奮してついつい言葉の端端に力が入ってしまいました。
あんな勝負に応じたこと自体が既に自分を低次元に落とし込んでいたんですよね。Marianさんに指摘されて目からうろこが落ちる思いでした。
名誉や自尊心のためなんてのは、どちらかと言えばあとづけの理由です。要するにウサギに馬鹿にされて悔しかったのです。

その後あのウサギのみならず、立派な犬小屋を建てたブルドックがさんざん自分の蓄財を自慢しまくったり、動物園の園長補佐になったサルが他の動物達に威張りまくったり、血統書にこだわるスピッツとか、装飾品にこだわるタヌキとか、ご主人の自慢ばかりするリスとか、子供の自慢ばかりするカエルとか、エサの自慢ばかりするネズミとか、随分色々な連中に会ってきました。それぞれに共通するのは、皆自分勝手なモノサシを
持っていて自分が勝った勝ったと主張することです。かくいう私もモノサシがないわけではありませんが、今はまだちょっと言えません。これとて私の勝手なモノサシなのです。
ただ私への嫌悪感は捨ててくだされば、と願ってやみません。別に私は特別な存在ではなく、あたりまえの感情を持ち、色々な事を考え、一生懸命生きているごく普通のイキモノなのです。

カメさん、ありがとうございました。また、いつでもお便りくださいね。

追記★ 「ウサギとカメ」の童謡の歌詞によると、かけっこの勝負を挑んだのは
カメのほうです、念のため!

このページに掲載のカメさんからのメッセージは、掲載されることを前提に
お書きになった“投稿”ではなく、個人的にくださったメッセージを、Marian
がお願いして掲載にご承諾いただきました。 (そのため、カメさんのメール
アドレスの表示をさし控えます。)

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