花散らす雨に騒がん我が心ひとより遅く歩みたき今日
落葉焚く老女美し いにしえの少女のころのはやり歌うたう
星空の尾根道歩む夢見たし悪夢重ねて目覚めし朝
ネパールで死にたしと語る我そのまえに恋せよという友 秋の酒
道を急ぐ影の彼方に白き欠け月 追いたしと想う我振り向きもせぬ君
色あせぬ心を詠うフランス小唄ふと開く仏語辞典に白き髪落つ
謂いかねて時節(とき)は過ぎ行き謂い澱み季節(とき)は止まりぬ紛れなきこころ
枯れ萎びし鉢に清水を遣るごとく恋の歌聴けば汝の紅き唇
一夜とて忘れも難く早や千夜 坂下に佇む我を汝が知るはずもなく
おとずれぬ眠り待ちつつ聖バレンティン夜 汝が名くちごみ寝がえりをうつ
酔い酔いし我が身支えて君が髪ほつれ解けて懐かしき香
汝が名よべば雪積むごとき恋しさよその真白さでいま言問わん
異(こと)の世の契り誓いて別れ来し五十路の恋に秋桜ゆれ
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