独りいて眺める月の惜しまれて想いを一筆便りしたたむ
秋空の碧きキャンバスひとり占め心の絵筆 君を描けり
虹色の風そよぐ野に独り立ち翼になれと もろ手ひろげぬ
夕焼けの心を染めしグラデーション君への想い濃く淡く燃ゆ
夕風にほのかに香る化粧花 夏の名残りの紅ぞ淋しき
梅雨空の鈍き光に どくだみの白き花びら黙して哀し
別れても温もり残る指先で愛の調を奏でたき夜
絢爛の春を謳いてあでやかに咲けど儚き花の調よ
散り初めし桜の花の下蔭にそっと埋めたき想い出のあり
風に舞う花のひとひらこの胸に散りて愛しや何を語らん
春風は愛を奏でる鴬の声にやさしく花びらを添え
春風の頬にふるればそこはかと花の香りはわれをいざなう
春の午後そぞろ歩きの道すがら花さまざまの声のやさしく
春空に君の描きし夢ありて あつき心のあらたなる旅
春告げし花を捧げて見送らん あふるる想いの言葉にならずば
かの空で我を見まもる君だけが時のとまりて若き日のまま
幾とせの春をめぐりて雛人形 今宵のわれの想いを知るらん
いつまでも変わらぬ若き人形に遠き日のわれ重ね見る宵
ぼんぼりの灯影に寄り添う内裏雛 桃の香ほのかにこころたゆとう
戯れに一輪 手折れば朝露のほろりと落ちて かなし椿よ
追憶のなかに香りぬ紅き梅 君と歩きし春浅き日よ
退院の便り友より届きたり水仙一輪咲きて立春
祈りこめ花を送らん我が友に見上げる空の春遠からじ
寒空に桜は幹を抱くごと枝を寄せ合い春を待ちおり
風花の白きひとひら頬にふれ涙のごとく流れとまどう
紅に雲染めわけて初日の出 祈りし君の新たなる幸
来る年が往く年よりも幸あれと初日に願えば浮かぶ面影
限りなく幾とせ流れそれぞれの想い出抱き初春(はる)を迎えん
叶うならただひとつだけの願いごと絵馬に書く文字秘めて小さく
西空に初日も傾き吹く風は頬に冷たく心にやさしく
屠蘇に酔い仰げば空の満月に白きうさぎの踊るさま見ゆ
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