兵庫県神戸市・charlie(自棄庵) 様

(ビートルズ世代の万年文学青年)


うれしさはいつもながらの人と呑み痩せ我慢せよと諭されるとき

とにもかく眠り伏したし悲しみの人ばかりいる真夜中の駅

炎天の坂に揺れ咲く向日葵よその高き誇り我に与えよ

蝉しぐれふと静かなリ夏の風わが胸底に青きさざ波

喉すぎる麦酒は苦くまた甘き破顔のひとの宵の饒舌

青梅をふいに差し出す白き指その母の笑みいま一度だけ

人はみな何を背負うか最終のバス乗る人に語らいもなし

哀しみが悔いより重き星月夜あの日の道は右を示すも

レコードの疵ある音よ我に似てかすれ消えるか淡き恋歌

沈みゆく西陽のはやさ汝の名呼びわれ武蔵野のポプラ葉を踏む

したためしふみ握りしめきょうは歩かん我が長き影に初雪の積む

かのひとににて淡紅く咲きしのぶ寒ぞら哀しさざんかの梅雨

たれかこの寒ぞらのしたの花を見んさざんかの梅雨にいのちのかぎり

手をとりて道をたどれば君の香のごと秋寒の野に匂い咲く花

心あらば明日に伝えよ宵明星 君が手をとり我は向かわん

心なくも君が涙の堰を切る我打ち据えよ君を抱きしめん

秘めおきしハンカチいずる薄碧の残り香もとめ我を嗤う夜

あの日より優しくなれるあの日より絆たしかめ夏の宵空潤む

携えて語り歩みし似たもの同士血を分けし兄の思いの今日の我

瞬きの短き時も忘るなし我が恋心agapeの碧にいまぞつつまん

ながながと語り合う人もなく梅雨晴れの風強きホーム細き三日月

紫陽花のごとく移ろう色の羨ましき移ろいも叶わぬ胸に一条の雨

いまはただ君が痛みに手を添えて ひとつ影にて歩みゆく夏

汝の幸を思えよ思え我が心されど明日にも我が腕にある思いして 

見失いてやさしき君の影ばかり愛しさはかくも深きか紫陽花の雨

悔い悔いてなお悔い千切る我が無邪気 木漏れ日にゆれし君がほほえみ

踝を張りつめ蹴りて君去れり我ひとり残る五月の碧き空広し

ひたすらに我を憎めよ美しき君我は受く そのひた蒼き君が静寂

音の出ぬ口笛のごとく うたうわれ なぐさめやらぬ重きこころに

何時からか楽天家なり浅き酔い星凍る空に口笛を吹く

受け止めて受け止めかねて星吹雪こは愛なるか瑠璃色の奈落

 
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